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医療奉仕から学んだこと・02

at the Philippines Aug.1987〜Jul.1988
 
 細川政権の目玉のひとつに、国際貢献国家日本奉仕国家日本を目指す、というのがあると聞き、大変嬉しく、政治家が、やっと、政治家らしい事を言い始めたと、しばし、胸を撫で下ろしているのは、私一人ではないでしょう。 外相を伴っての訪米にも、少なからず期待を寄せています。

 1988年、第3回武見国際シンポジウム公開講演会で、国際保健医療協力の理想と現実−日本に求められているもの−と題する基調講演のなかで、現・WHO事務局長、中嶋 宏先生は、国際保健医療協力の過去の歴史的経緯を分析し、これを踏まえたうえで、これからの在り方として援助よりも協力、プロジェクトよりもプログラム、さらには、物・施設よりも人材育成と指導を強調すべきであると述べております。また、日本国際保健医療学会でも同様な指摘があり、今までの緊急援助型、世話女房医療援助から問題解決型、自助・自立を促し、やり方を教えて自前でやらせる医療協力へ変わっていくのが良いであろうと論議されております。いわゆる医療資源は無限に有るわけではなく、数量・質ともに限られており、これは医療の先進国、後進国を問わず言える事でしょう。 しかし、医療面の先進後進に限らず、高度開発国と開発途上国との間には、歴史的にも文化的にも、また相互の対視点的にも溝があり、隔たりがあるのが現実です。これをいかに埋め合わせをし、越えてゆくのか、共通する基盤のうえで理解するために心を通わせて行くことができるか、という観点から取り組んで行かないと、医療奉仕にせよ、医療援助、医療協力にせようまく行かないのではないかと思います。新生児にはそれこそ親の愛情と献身的な行動が不可欠でしょうし、乳児・幼児期にも、親としての愛と献身によって心身が健やかに成長し、小児から成人へと発育、発達してゆくにつれ自立するようにさせ、また時には苦い言葉も、突き放すことも、必要になってきます。日本は、一足さきに、経済的、物質的繁栄を享受するまでになりましたが、果たして、物質的貧困の克服のかげに心の貧困はそのままで、あるいはもっとひどくなって残ってはいないでしょうか。心が悲痛な叫びをあげてはいないでしょうか。比国での奉仕活動で学ばせていただいた一つに、現地の指導者層、上流階級に属する方達の全てが、貧困で、社会の底辺にいる人達が、本当に良くなる事を願っているわけではないということでした。もちろん、ほとんどの指導者は、真に、住民、国民のために働いていましたが。高度開発国の開発途上国に対するも、同じ様な政策、政略のあった事が最近の情報公開で明らかになってきていますし日本においても、その様な事がないという保証はありません。私たち自身のなかにも、その様な思いに捕らわれている自分を見いだすことができるのです。

 医療奉仕・医療援助・医療協力をするには勿論、経験、知識、技術、資格、語学力、協調性が必要でしょうし、より高度な方が良いかもしれません。しかし、これらは言ってみれば、人材の医療資源のハードであり、このハードが、上手く稼動するかどうかは、ひとえにソフトにかかっているのだと思います。心がソフトであり、資質が、ソフトでしょう。このソフトの開発こそが、今の日本の急務であるといえるのではないでしょうか。

 医療の社会レベル、公衆レベルとの同調性同次元性を考えると、遠回りのようでも、政治経済、倫理、道徳、教育、文化等の全体的な安定的向上による自主的努力の結果として、健康が勝ちとられてゆくものなのでしょう。

 幸いにも、現地では、カウンターパートとして国会議員、県知事、市長フィリピン医師会、大統領の主治歯科医、地元の医師会、歯科医師会、ロータリークラブ、ライオンズクラブ、商工会議所、弁護士、退役軍人、日系人会、自治会長、医科・歯科大学、及び教授さらには副大統領閣下の具体的な協力を得る事が出来、無事に活動を終えることができました。

 ライオンズクラブの名誉会員に任命され、功労賞を受けたのは、MAWP、ならびに医療奉仕活動を、深く理解し、かつ、物心両面から、長期にわたって、具体的な援助をしてくださっている方々を、代表したものでした。

 過去の歴史を越え、文化も越えて、一つになって行ける心の出会いの場を与えられた比国での歩みは、今では苦労したことも、空の青さ、海の輝きの中に、溶けて、消え、未来への、力強い希望に、変わってしまいました。

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